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アメリカのダブルスタンダード・核兵器保有、インド、イスラエル:○、イラン、パキスタン:× 日本政府は米印核協定(原子力協定)発効に反対すべき

荒木祥2008/08/17
「テロとの戦い」と地球温暖化問題を口実にした米印核協定は、アメリカの「ダブル・スタンダード」だ。アメリカは、イスラエルとインドには核兵器保有を認め、イランとパキスタンには許さない。日本の市民団体などが、原子力供給グループ(NSG)45か国政府に申し入れを行い、東京では記者会見も行われた。
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 米印核協定(原子力協定)に端を発する、インドの核開発と米国の支援問題。被爆国である日本は、核兵器拡散につながるインドへの燃料供給などに反対すべきだ − 8月15日、広島市長と長崎市長を含む23か国の121団体と40名の個人が、原子力供給国グループ(NSG)45か国政府に申し入れを行い、東京では記者会見も行われた(※)。

 8月6日には、同様の申し入れをすでに「世界平和アピール7人委員会」が、日本政府に対して行っており、他にもいくつかの団体が申し知れなどを予定している。「核兵器廃絶市民連絡会」はリーフレットを作成し、多くの市民の行動を呼びかけている。


 ※(敬称略) 日本被団協・田中熙巳(事務局長)、世界平和アピール7人委員会・小沼通二、日本パグウォッシュ会議・鈴木達治郎、abolition 2000・フィリップ・ワイト、ピースデポ・中村桂子、核兵器廃絶市民連絡会・内藤雅義、ほか

アメリカのダブルスタンダード・核兵器保有、インド、イスラエル:○、イラン、パキスタン:× 日本政府は米印核協定(原子力協定)発効に反対すべき | <center>左:田中熙巳さん、中:内藤雅義さん</center>
左:田中熙巳さん、中:内藤雅義さん
 1974年に最初の核実験(平和利用目的と称した)を行ったインドは、核兵器保有を、米国、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国にしか認めないNPT(核拡散防止条約)に反対し、NPTに加わることなどを拒否し続け、1997年には2度目の核実験(軍事利用目的)を行った。

 1974年のインド核実験に核拡散の危機を感じた諸国は、NPT体制を強化、IAEA(国際原子力機関)の監視体制も強化した。このためIAEAは現在まで、年間予算の半分ほどを費やして、日本の原子力発電や東海村・六ヶ所村の核燃料サイクルを厳重に監視している。

 ところが「テロとの戦い」以後、アメリカがインドの核(原子力)の平和利用を後押ししようとする米印核協定(原子力協定)が結ばれた。結果、IAEAはインドを特別扱いする予定となり、インドの核開発は「平和利用は監視するが、軍事利用は監視しない」という例外扱いをしようとしている。しかもアメリカはインドの核について、平和利用の推進を援助しようとしているが、平和目的の供給核燃料が軍事転用されない保証はどこにもない。

 地球温暖化問題を口実に、米政府や産業界、日本の経済産業省などは原子力技術などのインド市場への売込みを狙っている模様だが、インドはあくまでも独自開発を目指しており、欲しいのは米国製の核燃料のみと見られている。

アメリカのダブルスタンダード・核兵器保有、インド、イスラエル:○、イラン、パキスタン:× 日本政府は米印核協定(原子力協定)発効に反対すべき | <center>フィリップ・ワイトさん</center>
フィリップ・ワイトさん
 「インド特別扱い」の問題は、米国、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国に、原子力を平和利用する諸国が加わった「原子力供給国グループ(NSG)」45か国が、8月の21日と22日に協議を行うことになっている。今のところ、オーストリアやスイスなどの6か国が、インドの「特別扱い」に反対しているが、被爆国である日本政府の態度は明確ではない。

 8月15日の記者会見で指摘されたように、インドの特別扱いを許せば、イスラエル、パキスタン、イランといった諸国が軍事目的の核開発や軍拡を急ぎ、世界の核問題は収拾がつかなくなる恐れがある。NPT(核拡散防止条約)体制の根幹を揺るがしてしまうインドの特別扱いは許されるべきではない。
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youtube 鈴木達治郎氏の「米印原子力協定」解説




youtube「米印原子力協定はNPT違反」―ダナパラ元国連事務次長語る



資 料

インドとの原子力協定、決断の時
――核拡散の危機回避にご助力を――


2008年8月15日


外務大臣殿

 貴政府、および、原子力供給国グループ(NSG)加盟の各国は、国際原子力機関(IAEA)との包括的保障措置協定締結を[核燃料の]供給条件としてきたNSGガイドラインの適用からインドを除外すべきとの提案を米国のブッシュ政権より受け、この提案を検討するよう迫られているところです。

 しかし、私たちの多くが2008年1月付の書簡(「インドの原子力協力関係に関する提案の見直しを」)で訴えましたように、現在提案されている協定の条項においてインドが約束していることだけでは、国際的な不拡散の規則及び規範に特例を設けることは正当化されません。

 この協定は、その提唱者たちの主張に反して、核不拡散条約(NPT)締約国に求められる核不拡散への取り組みにインドを準拠させることはありません。他の178か国とは異なり、インドは包括的核実験禁止条約(CTBT)に未だ署名していません。また、同国は核分裂性物質を生産し、核軍備を拡大し続けています。インドは、これまでNPTに加盟したことのない3か国のうちのひとつであり、法的拘束力のあるかたちで核軍縮を達成するとの誓約を行ったことがありません。包括的なフル・スコープIAEA保障措置の受諾も拒否しています。

 しかし米印原子力協定は、NPT下の義務を遵守している国にのみ本来与えられるべき民生用核取引という権利と特典をインドに与えるものです。これは「良い」核拡散国と「悪い」核拡散国という危険な差別を生み出すものであり、国際社会に対してNPT規範に関する誤解を招くシグナルを送るものとなります。

 国際的な核不拡散および軍縮体制にはすでに問題が山積しています。私たちは、それをさらに損なわせることのないよう、しかるべき措置を貴国がとることを強く求めます。

 NSGは全会一致の意思決定方式をとっているため、貴政府におかれましては、米印両国の提案には次のようなマイナス点があることをご考慮いただく責任があると考えます。

1.原子力保障措置体制を損なう
 包括的な原子力保障措置という供給基準からインドを除外する提案は、原子力保障措置システムのさらなる崩壊へと繋がりかねません。インドが保障措置の枠外で核兵器計画を堅持していることを鑑みれば、わずかの追加的「民生用」原子炉に関して個別施設ごとの(facility-specific)保障措置を結んでも、不拡散上の大きな利点をもたらしません。

 慎重な討議を経て作成された1995年NPT再検討・延長会議の最終文書では、すべてのNPT締約国はフル・スコープ保障措置受諾を[核燃料]供給の条件とする原則に合意しました。インドをこうした義務の例外扱いするというNSGの決定は、NPTにおけるこうした交換条件とも矛盾するものです。加えて、140を超える他のNPT締約国にかわってこの問題を決定する責任を[わずか45か国の]NSG加盟国に負わせることは適切ではありません。

 さらに悪いことに、インド政府高官は、核燃料供給が中断した際には、それが同国の核実験再開によるものであっても、IAEAによる監視を中断させるかもしれないと示唆しています。NSG加盟国はこのような解釈を断固拒否すべきです。貴政府は、NSGガイドライン上の義務から「インドのみ」を免除する規定を設けるというこの提案を拒絶する重大な責任を有しています。このような義務免除は、すべての核物質および施設を恒久的に保障措置下に置くという原則といかなる意味においても矛盾する保障措置協定を前提としているのです。

 インドはまた、2005年7月18日に、保障措置協定の追加議定書を締結することを誓約しています。各国は、NSGガイドラインに「インドのみに適用される」変更を加えることが適切かどうか、だとすればどのような変更を加えるのかを検討する前に、インドが有意義な追加議定書保障措置体制を受け入れるよう主張しなければなりません。

2.機微の濃縮および再処理製品の移転の可能性について
 「完全な」原子力協力の獲得に向けたインドの主張をNSGで否決しなければ、再処理・濃縮技術ならびに製品を含む、核弾頭用物質の生産に使われうる技術の拡散を防止しようとの努力は損なわれてしまいます。これら機微の核技術の移転を認めることは、このような製品が複製されインドの核兵器計画推進に利用されることをIAEA保障措置が防ぐことができない現状をかんがみれば、極めて愚かなことといえましょう。

 インドが1974年、当時の2国間原子力平和利用協定に違反して、カナダおよび米国から提供された重水炉で生産されたプルトニウムを使って核装置を爆発させたことを思い起こしてください。米政府高官はそのような技術を売る意図はなかったと述べていましたが、他の国々はそのような意図を持っているかもしれません。実際のところ、すべてのNSG加盟国は、これら機微の核技術をNPT非締約国に移転することを禁止する提案を支持しています。インドだけが例外であってはなりません。

3.インド核兵器計画への間接的支援について
 インドが兵器用核分裂性物質の生産を停止していないなかで、外国から核燃料が供給されれば、インドにおける比較的少量の国内供給を軍事核部門が独占して使用することが可能になり、よって間接的にインドの核軍備の拡大に寄与する可能性があります。これは、たとえNPT第1条の文言(直接的・間接的を問わず他国の核兵器計画への支援を禁じている)に違反していなくとも、その精神に違反するものであり、南アジアでの軍備競争をいっそう加速するものとなるでしょう。

 国際的で検証可能な核分裂性物質生産禁止条約の交渉を支持するというインドの口約束は、もう10年以上もこのような条約の交渉開始に至っていないなかでの、うわべだけのパフォーマンスに過ぎません。

4.インドの核実験を促進する
 マンモハン・シン首相が2005年7月18日に述べたように、もしインドが先進的な核能力を保有する他の国々と「同様の責任と実践を担う」のであれば、インドが法的拘束力のある核爆発実験モラトリウムに合意すべきことを期待するのは理にかなっています。CTBT署名国にとって、CTBT署名を、インドおよびその他のCTBT未署名国とNSG諸国との核取引の基本的条件として設定しないことは、極めて無責任と言えるでしょう。

 シン首相はインドの自発的な核実験モラトリアムを維持するという誓約を繰り返し述べてきましたが、その一方で、インドは実験禁止に関するあらゆる誓約を避けることに努め、実験再開の際に罰則を受ける可能性を避けることにも努めてきました。最近では、シン首相が、下院における7月22日の声明で、「我々の国家安全保障上の懸念から正当と見なされた場合に、これらの協定は我々のさらなる核実験実施を妨げるものではないことを確認する」と断言しました。

 インドが核実験を再開した際の燃料供給停止の影響を低減するべく、インド政府高官はさらに進んで、NSGガイドラインからの例外扱いをいわゆる「クリーン」で「無条件の」ものにすることを求めると同時に、インドへの戦略的燃料備蓄および(あるいは)恒久的な燃料保証の供与に役立つ2国間の核協力協定を追求しています。

 これは、燃料の供給は原子炉運転の正当な要件を満たしたものに限定することを明記した、2006年の米国履行法令の条項に明確に違反しています。これは、バラク・オバマ上院議員が提唱し、米議会が承認したものです。さらにこれは、核実験が起こればすべての米印原子力協力を即時停止するとした米国履行法令に基づく政策にも反します【注1】。

 核実験を阻止するためには、効果的な罰則が必要です。もしNSG加盟国がインドの「民生用」原子炉への燃料供給に合意するのであれば、それらの国々は、インドが将来的に核実験を行うことを可能にしたり、あるいは奨励したりするような取り決めを避けなければなりません。さもなければ、貴殿と貴政府は、不安定化をもたらす新たな一連の核実験促進の共犯となってしまうかもしれないのです。

 インドを特定のNSGガイドラインから除外するという思慮のない提案における上述のような欠点を考慮して、私たちは以下を勧告します。

●NSG加盟の供給国がインドへの核燃料供給に合意するのであれば、それらの国々は、インドが核実験を再開した場合、もしくは「民生用」施設または物質を国際的な保障措置から外した場合、NSG加盟国の関与するインドとの核協力をすべて中止し、NSG加盟国から提供された未使用の核燃料の返却を求めなければならない。NSG加盟の供給国がインドへの燃料供給に合意するのであれば、それらの国々はそれを通常の原子炉運転要件と同一の基準で行うべきであり、個別的・集団的を問わず、戦略的あるいは恒久的な核燃料備蓄を提供するべきではない。

●NSG加盟国は、2国間原子力協力協定の内外を問わず、機微のプルトニウム再処理や、ウラン濃縮、重水生産製品のインドへの移転を明確に禁止すべきである。

●NSG加盟国は、インドを特別に例外扱いする保障措置協定や、すべての核物質および施設に恒久的な保障措置をかけるという原則にいかなる意味においても一致しない協定に対し、積極的な反対姿勢をとるべきである。

●NSGのフル・スコープ保障措置基準からの免除が与えられる前に、インドは5つの核兵器国と同様、兵器用核分裂性物質の生産を中止し、核実験モラトリアムを有効で法的拘束力のある誓約へと変えることを宣言しなければならない【注2】。

●NSG加盟国は、恒久的かつ無条件なIAEA保障措置下に置かれていない施設において、NSG加盟国が供給した核燃料の再処理を行うことに関する同意をインドに与えてはならない。また、その他の施設で生産されたいかなる物質も、保障措置下に置かれていないいかなる施設にも移転させないようにしなくてはならない。

●NSG加盟国は、それらの国々がインドと締結するすべての2国間核協力協定において、軍民両用技術を複製すること、あるいは、保障措置下に置かれないインドの施設においてそうした技術を使用することについて、明確に禁止するようにしなければならない。

 インドとの核協定は、不拡散の努力における最悪の事態であり、とりわけ現在においては世界的な核軍縮の見通しへの深刻な打撃となるものです。軍備競争の終焉や、すべての国家による国際的な誓約遵守、核不拡散条約の強化に向かって真剣に取り組んでおられる世界の指導者の皆様におかれましては、今こそ立ち上がり、旗幟を鮮明にすべきときだと考えます。

ダリル・キンボール
軍備管理協会代表、ワシントンDC


【注1】 2006年9月16日の米上院における、バラク・オバマ上院議員と上院外交関係委員会議長(当時)のリチャード・ルーガー上院議員とのやり取りを参照。以下のウェブに掲載。
 ・http://bulk.resource.org/gpo.gov/record/2006/2006_S11021.pdf
 ・http://bulk.resource.org/gpo.gov/record/2006/2006_S11022.pdf
あわせてヘンリー・J・ハイド米印原子力平和利用協力法のセクション103(b)の10節を参照。

【注2】 すべての国連加盟国は、インド及びパキスタンに対して包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名、兵器用核分裂性物質の生産中止、その他の核リスク低減措置の実施を求めている国連安保理決議1172を支持するよう義務付けられている。すべてのNSG加盟国は、インド及びパキスタンに対し、これら及びその他の核抑制措置の履行について繰り返しかつ積極的に奨励することによって、安保理決議1172に基づく義務を遵守する責任を有する。 
◇ ◇ ◇

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