お待たせいたしました。動画UP致します。12:25(編集部)
学校を訪問するレシャードさん(「カレーズの会」提供、以下同)
レシャードさんは1969年に留学のため来日して京都大学医学部を卒業、その後日本国籍をとって医師になり、地域医療に携わるかたわらパキスタンやカンボジアの難民キャンプ、さらには中東のイエメンなど海外の各地で医療奉仕活動をおこなった経験を持っている。
以前に会ったとき「患者がいればどこへでも出かけていく。医者の基本は往診です」と語ったのが私の記憶に残っている。病院で長々と順番を待たされるのが当たり前の今の日本。往診というなつかしい響きの言葉にああそういものがあったなと自分の子どもの頃を思い起こしたものだった。
「医者が往診して患者さんが元気づけられるという場面を小学生のころからみていて医療そのものが人を救うということを自覚していた」「日本に来たのは同じアジアの国の一つということで特に日本の文化とか戦後復興などに関心があった」とある大学でおこなった学生たちへの講演のなかで話している。
クリニックでの診療
今回の私とのやりとりのなかでは自分の活動についてこんな風に語った。
「私は日本がアフガニスタンより倍くらい長くなったので、わたし自身は日本人として生活し日本人として物事を考えているが、生まれ育った国アフガニスタンはあまりにも悲惨な状況の中にあるのでそのために何らかの少しでも役に立つことは人道的な立場、医師としての立場からもやらなくてはいけないと思い、最低限のことをやらせていただいている」
そして、日本がこれからとるべき立場については「日本は戦争の大きな被害を受けてその後、立派に立ち直れるという経験のある国だから、その国が軍隊とか力づくでそれができたものでないことは一番よくわかっている。そういう意味では日本の経験はもっと積極的に活かすべきだ」と重ねて強調した。
2001年9月の米同時多発テロから7年が過ぎた。米国が国際テロ組織「アルカイダ」の撃破を目指して開始した「対テロ戦争」の舞台にされたアフガニスタンから伝えられる最近の情勢は治安の一段の悪化を憂えさせるばかりで、混迷の出口は一向に明らかでない。
「現実に7万人の世界最強の軍隊がアフガニスタンの方々で活動してなおかつこんなに治安が悪くなって、日に日に悪くなっていることを考えると、もう力づくでは限界ではないか。反発している人たちの声に耳を貸すことも今は必要なことではないか。なおかつその上で犯罪とかいろいろなものには軍事力なり警察力は必要だが、根本的な考え違いを持っているお互いのアイデア、路線の違いは話し合いによって解決せざるをえない部分だと思う」。切羽詰まった祖国への強い危機意識を思いの底に感じさせる。
難民キャンプでの診療
具体策について意見を聞くと以下の2点が返ってきた。
「内陸であるアフガニスタンはいろいろな国々と接している。テロにしても武器にしても海外からいつでもどこからでも入ってくる。訓練されたテロリストもいくらでも入ってくることが可能だ。国際社会で大きな問題であるヘロインとか麻薬の問題も同じルートを逆に海外に出て行くことになる。今一番大切なことはこのルートを断つためには周辺国との話し合い、対話だと思う。そういうことをぜひとも日本の立場で、日本が中央アジアやそういう地域で大変大きな強い信頼があるので、そういう対話の機会は日本も持つべきだ」
「いまひとつ大切なことはアフガニスタンのなかでいろんな部族とか、軍閥、派閥がある。それが結果的に今の対立につながっているので、その人たち自身の対話がない限りただただ武器とか力で押さえつけるのは不可能だ。やはり対話という問題がいま一番大切なことであって国内でも国外でも必要な分野だ。給油で大量に使うお金よりもそういう根本的な面でお金を使うことが一番有効な手段ではないかと思っている」
軍と人道支援の関係でレシャードさんが批判的なPRT(軍と民間が一体となった支援システム)に関連して、今回はこんな指摘をした。
「確かに国によってはある程度支援は軍が中心にやることが可能なところもあるだろうが、ただ文化的な違いは大変大きなものがある。たとえばアフガニスタンでは武器を持った人は敵という単純な発想を持っている。武器を持った人が物乞いする人にパンを差し出しても好意ではなくて敵意を持って差し出しているものと思われてしまう。武器を持っている人間は敵であるという発想を持っているので、そういう人たちの文化を知っておく必要がある。その人たちに見合った協力の仕方、現地に見合った形の支援をしてもらいたい」
米国の対テロ戦争について、「軍事的資金や力を注いでも結論が出ない悪循環に陥っていることを考えると、いまはむしろ違った方向に考えていく、いままでのやり方を見直す時期に来ている」とし、日本についても、「アメリカについていく支援の仕方だけでアフガニスタンの問題は解決できる問題ではない」と指摘した。
とくに自衛隊のアフガニスタン派遣の問題に言及して、「自衛隊はアフガニスタンにむしろ自衛隊として行くのではなく、あるいはアメリカ軍の支援の軍隊として行くのではなくて、むしろ本当に役割を果たしたいというのならPKO(国連平和維持活動)としてのインフラの整備という形で人道的な立場から貢献できる」とし、「あるいは今日本では団塊の世代が、大きな技術や国際協力の貢献につながることが一番問われていることではないかと思う。そういう意味では日本の行うべき姿は、むしろ軍隊とかそういうものではなく、もっとNGOなり、非政府組織、技術面、対話の面での協力が一番必要な部分ではないかと思っている」とも語った。
ここまで5回に分けてレシャードさんの話を紹介した。シリーズの最初にも記したが、今回はレシャードさんが所用で上京した8月31日に急遽機会をいただいて話をうかがった。伊藤さんの事件はまだまだ真相も背景も不透明部分が多く、この時点では踏み込みすぎたことをうかがったかもしれないが、レシャードさんから率直にいろいろ話していただいた。伊藤さんの尊い命が失われたことを重く受け止めながらアフガニスタンの問題について今何を考えなければならないのか。アフガニスタンと日本をともに肌で知るレシャードさんの指摘も今しっかりと受け止めなければならないと私は思っている。
空爆の被害を受けた村の光景(同)
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空爆されて避難した女の子(同)
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