10月10日、米国・ワシントンを訪れたムカジー・インド外相は、ライス米国務長官との間で米印原子力協定に調印し同協定が発効した。インドは9月30日にマンモハン・シン首相がフランスを訪問し、同国と原子力協定を結ぶことをサルコジ大統領と合意した。インドは、米仏の協力による核燃料を原発に回し、自国の核資源で軍拡に走ると見られている。
これに対し、パキスタンは10月18日、中国から2基の原発建設に支援を受ける原子力協定に調印したと発表した。インドとパキスタンは核拡散防止条約に加盟していないが、インドに対し米国が核燃料などの輸出を認めた原子力協定に調印したことから、パキスタンはこれに対抗して中国に支援を求めたと見られる。
インド、パキスタンはともに核実験をした事実上の核保有国で、カシミールをめぐる対立がある。中国もインドと対立しており、核拡散から更なる核兵器開発競争へと、中央アジアの安全への懸念が高まってきた。
シン首相(右)と、ケサーダ・メキシコ大統領(当時) 2005年8月1日
ウィキペディア/メキシコ政府(パブリックドメイン)
温暖化対策を口実に、原発建設の再興を目指す原子力供給国は、米仏だけでなく英国やロシア、日本なども原発ビジネスの市場獲得に乗り遅れまいとして、これら途上国への進出に乗り出し始めた。が、世界的な金融危機の勃発で、巨額な建設費用の調達に影響が出ることも考えられ、実際に着工されるかどうか先行きは不透明になってきてはいる。
そんな中、10月21日から23日にかけて、インドのマンモハン・シン首相が国賓として来日、22日には麻生首相と会談する。シン首相らは経済協力の拡大などを求めるが、来日前の記者会見では「米仏から取り付けたのと同様な原子力協定を将来の日本に期待する」と述べており、その要請の布石もすると思われる。
これに対し、NSG(原子力供給国グループ)でのインド例外扱いに反対するよう、日本政府に繰り返し要請してきた全国の反核平和を求めるNGO・市民団体は、日本政府のこれまでの核不拡散の立場を踏まえ、「NPT加入とCTBTの署名・批准を行わない限り、インドに対して原子力協力を行わないことを明確にするよう」求める要請書を10月20日、内閣総理大臣および外務大臣に送った。
シン首相は原子力についての「日本の国民感情は認識している」と伝えられているが、現行の国際ルールに反するインドの核兵器開発に対する日本の市民の反発は強いことを理解すべきだ。来日を機に、日本政府は広島、長崎の原爆の被害と被爆者らの尽きぬ苦しみ、放射線被曝の深刻な被害について少しでも同首相の理解を求める機会を設けてもらいたい。核実験をしたインド首脳は、核兵器を開発し引き続き保有し続けるのであれば、その恐るべき実態を学ぶことを通じて、核兵器廃絶への再考を促したい。
シン首相来日にあたり、対インド原子力協力に関する要請
2008年10月20日
内閣総理大臣 麻生太郎 様
外務大臣 中曽根弘文 様
10月21日から23日にかけて、インドのマンモハン・シン首相が来日され、22日に麻生首相と会談することが予定されています。
インドは、核拡散防止条約(NPT)体制の外で核実験を行い、核兵器を保有していたことから、国際原子力機関(IAEA)による包括的保障措置を受けない国との原子力取引を禁じた原子力供給国グループ(NSG)のガイドラインにより、長らく、国際的な原子力取引ができない状況にありました。
ところが、アメリカのブッシュ政権が、インドとの原子力協力を行えるよう強く働きかけ、去る9月6日のNSGの臨時総会において、インドを例外扱いとする声明が採択されるに至りました。これを受けて、インド政府は、アメリカ、フランスと同様に、日本政府にもインドに対する原子力協力を要請するものと思われます。
しかし、日本政府はこれまで繰り返し、インドにNPTへの加盟と包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名を求め、NSGのガイドラインの変更にあたっても、インドに同様の要求をしたと述べております。
ついては、日本政府のこれまでの立場を踏まえ、NSGのガイドラインの変更にかかわらず、NPT加入とCTBTの署名・批准を行わない限り、インドに対して原子力協力を行わないことを明確にするよう、強く求めます。
賛同団体(50音順):
核兵器廃絶市民連絡会
連絡責任者 内藤 雅義
核兵器廃絶ナガサキ市民会議
代表 土山 秀夫
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
共同代表 岡本三夫 河合護郎 森瀧春子
原子力資料情報室
共同代表 伴 英幸
原水爆禁止日本国民会議
議長 市川 定夫
原水爆禁止日本協議会
事務局長 高草木 博
世界平和アピール七人委員会
事務局長 小沼 通二
日本原水爆被害者団体協議会
事務局長 田中 照巳
日本YWCA
会長 石井 摩耶子
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