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男女平等主義者オバマ 初の黒人大統領の陰に4人の女性あり

三井マリ子2008/11/08
オバマの勝利に、全米女性連盟NOWは、「女性たちの勝利です。今までで最もフェミニスト的な行政府となるでしょう」とコメントを出した。女性の立場を深く理解したオバマ候補は、大統領選にあたって「働く女性のための10の政策」を打ち出した。
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男女平等主義者オバマ 初の黒人大統領の陰に4人の女性あり | <center>オバマ氏の勝利を報道する11月6日の朝刊各紙</center>
オバマ氏の勝利を報道する11月6日の朝刊各紙
 11月5日、バラック・オバマ上院議員は大統領選挙を終え、シカゴのグランド・パークで勝利スピーチをした。その実況放映をインターネットで視聴した。その中でオバマ議員は、アトランタに住む106歳の女性アン・クーパーさんを「奴隷制度が終わって最初の世代の人」として引き合いに出した。彼女が女性であるがために、そして黒人であるがために投票できなかった時代から、黒人大統領候補の自分に投票した歴史的な日まで、アメリカの変化を感動的に語った。

 オバマの勝利に、全米女性連盟NOWは、「女性たちの勝利です。今までで最もフェミニスト的な行政府となるでしょう」とコメントを出した。「女性」に焦点をあてる彼の視点と見識は選挙の公約にも表れていた。働く女性や、家族のための政策や考え方を、オバマ候補公式ホームページや演説から拾ってみる。

 「女性たちが力をつけること、そして家族が強くなることによって、これまでとは基本的にまったく違った方向にアメリカを動かせると思います。この信念は私の心髄なのです」

 人口の半分の女性たちの権利を正当に扱うことでアメリカを建て直すと言っている。この態度は、アメリカで最も激しく意見が分かれる「妊娠中絶の権利」を擁護してきた彼の次の発言にも表れている。
 
 「いつ、何人の子どもを産むかを、政府の介入なしに、女性が決められるということは、われわれの持つ最も基本的な権利のひとつです。これは、(妊娠中絶を)選択できる権利の問題というだけではなく、全女性とっての平等の問題なのです」

 こうした政策の背景には3人の「彼女たち」がいた。「大統領候補になれたのは、ひとえに彼女たちがいたからです」とオバマはいう。

 3人の1人である母親はカンザス州に生まれ、ハワイの大学に通った。同じくハワイに留学していたケニア人と結婚して彼を産む。しかし彼が2歳のとき両親が離婚。彼はシングルマザーに育てられた。母は、その後インドネシア人と再婚した。

 オバマは、今は亡き母を、「小さい頃、母は朝4時半に僕を起こして勉強させたものです」「僕は不平不満でいっぱいでした」という。ここには、夜明け前に子どもより早く起きてがんばった母親がいる。

 その後、母親に代わって彼の面倒を見たのは祖母だった。彼が若い頃、一家の主たる稼ぎ手として家族を支えた。「祖母は、戦中、大砲を生産する工場のラインで働くロージー・ザ・リベターそのものでした」

 ロージー・ザ・リベターとは、「リベット打ちのロージー(女の名)」。第2次世界大戦中、男性に代わって軍需工場で働いた女性労働者たちのことを指す。この言葉は後に、男性の牙城に挑戦する女性を増やすためのシンボルとして使われるようになった。そのポスターのスローガンは「We Can Do It!」。大統領選挙で最も有名になった言葉「Yes, We Can!」は、自分の祖母でもあったロージー・ザ・リベターのポスターからヒントを得たのではないか、と思える。

 そして配偶者ミッシェル・オバマ。彼女は、奴隷の子孫として貧しいシカゴの南地区に生まれたハーバード大学出身の弁護士である。各州を回り、働く女性のために夫がいかに力を入れているかを演説して回った。またテレビのトークショーや集会で、家庭における彼の実像をユーモア混じりに紹介し、神聖化されつつある夫を、普通の家庭人に引き戻した。黒人女性としての怒りをにじませながら語る彼女に、敵陣からの攻撃はすさまじかった。「選挙期間中もっとも辛かったことは、ミッシェルが攻撃されたこと」と夫のオバマは述べている。

 こうした環境のもとで女性の立場を深く理解したオバマ候補は、大統領選にあたって「働く女性のための10の政策」を打ち出す(和訳は筆者)。



1)1人につき最大500ドル、1家族につき最大1000ドルの減税。この減税は7100万人の働く女性にプラスとなる

2)2011年まで最低賃金を9ドル50セント引きあげる。年間最大4700ドルの賃上げとなり、840万人の働く女性にプラスとなる

3)勤労所得税控除(EITC)の対象を広げる。それによって500万人の働く女性にプラスとなる。低賃金層の親たちの子どもを貧困から引き上げる

4)子ども税額控除Child Tax Creditの対象を、働く女性たち750万人に拡大する。年収5万ドルで子ども2人を育てている女性は、2100ドルの減税となる

5)質の高い学童保育と夏期学習プログラムの対象者を200万人増やす

6)年7日間の有給の病気休暇をあたえる。働く女性2200万人が1日たりとも有給の病気休暇をとれない現実が改善される

7)男性1ドルに対し女性77セントでしかない性差別賃金を解消する

 1.昨年の最高裁判決によって賃金差別を訴えることがより困難になったので、それを覆すための「公平賃金返還法」に賛成する
 2.雇用機会均等委員会EEOCなどへの予算を増額する。社会資源や人員を増やすことによってEEOCの実効性を高め、男女平等賃金違反事件を効果的に処理する
 3.有給休暇をとりやすくし柔軟な働き方を選べるよう職場環境改善を支援する。これによって働く女性は家庭と仕事を両立しやすくなる

8)退職金制度のない4500万人の働く女性のために退職引当金を増額する

9)870万人の女性実業家たちに、事業拡大や雇用増大に向けての支援策をとる。小企業と起業家(女性実業家の多くはこれ)にキャピタル・ゲイン税をゼロにする

10)健康保険のない2150万人の女性に、良質な健康ケアを提供する。1期目において、全国民が、健康のための質の高いケアが得られるよう「包括的健康保険法」に賛成する。これによって2150万人の女性を含む4700万人の健康保険のない人たちに健康のケアを提供できる。不充分な健康保険にしか入っていない2500万人の健康の向上にもつながる。この人たちには女性が多く、彼女らは埒外の費用をカバーできず健康保険がない人とほぼ同じ状態に置かれている。健康保険に入ってない人、不十分な健康保険しか入れない人をあわせると、その数は女性の45%にのぼる(男40%)。女性の40%は高額医療費に困っている(男29%)。女性の33%が医療費に収入の10%以上を費やしている(男18%)。

 以上の10の政策の中で、もっとも注目すべきは、(7)性差別賃金の解消だろう。そのための雇用機会均等委員会EEOCへの予算増は、労働組合、市民権運動団体、女性団体から必死の要請が続いていた。EEOCは、性や肌の色などによる差別を受けた人が、職場内で解決できなかった被害を訴え出る最後の砦だ。北欧におけるオンブズマンのような公的機関であり、訴えを調査し、結果を公表し、必要ならば被害者に代わって提訴する権限も持つ。この機関は長年、市民権獲得に大きく貢献してきた。しかし、ブッシュ大統領は、極端な人員削減や権限弱体化をはかった。その結果、今では、約5万件の訴えが手付かずのままファイルに眠っているといわれる。

 最後の(10)の包括的健康保険法はヒラリー・クリントン上院議員が政治生命を賭けて進めてきた。当時は、保守層から猛反発にあい流れてしまった。当初、オバマ議員はクリントン議員提唱の全員をカバーする健康保険制度には反対だった。しかし民主党予備選で惜敗したクリントン上院議員は、オバマ大統領応援へと動き、オバマの健康政策に変化が見られた。

 初の女性大統領誕生へと全米を動かしたヒラリー・クリントン議員は、オバマ候補に影響を与えた4人目の女性となった。

参考サイト
http://www.barackobama.com/
http://www.reproductiverights.org/pr_08_1105Obama.html
http://www.now.org/
http://articles.latimes.com/2006/jun/17/nation/na-eeoc17
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