11月9日のNHK特集で米空母オリスカニー(CVA―34)による核の持ち込みについて放送されていました。私も見てみましたが、結構興味深い内容です。ただ、この番組は濃い内容をわずか50分程度の番組にまとめてしまったため、説明不足の観は否めません。そこでこの記事では不足している部分についてフォローしてみたいと思います。いい番組だから再放送はしてもらいたいものです。
オリスカニーは日本海軍を壊滅させた、エセックス級(タイコンデロガ級とも扱われる)航空母艦の一隻として建造されました。すでに自沈させられて、世界でも有数の「魚礁」となっています。当時の日本で言えば、最新の翔鶴級に相当する空母ですが、わが翔鶴級がわずか2隻で終わったのに対して、24隻が建造されて、そのうち14隻が実戦に投入され最終的には大和、武蔵などの日本艦隊の主力艦に引導を渡す役を務めています。
この級の空母は、レーダーを活用したすぐれた指揮システム、有力な艦載機、当時の高度技術を結集した近接信管を採用し威力を増した対空火器、優れたダメージコントロールなどなどとあいまって、度重なる神風特攻隊の攻撃にも耐え、一隻の戦没もなしに乗り切りました。
オリスカニーは戦争中に起工されましたが、建造中にVJデイを迎えたため、一旦、建造中止となりました。そして原型となったエセックス級よりも大きく改造されて(核兵器運用能力の付与とか、対空兵器の減少など)1950年9月に就役しました。当初は地中海に展開し、その後ホーン岬経由で太平洋艦隊に配属、当時、シーソーゲームの展開されていた朝鮮半島へ投入(1952年9月から53年9月までのほぼ1年間)されました。
番組で紹介された核兵器Mark 5(Wikipedia, public domain)。
番組ではこのころのオリスカニーへの核兵器の配備状態と、その搭載機を紹介しています。核兵器はMark 5として紹介されていました。グローバルセキュリティのサイトをみますと、最初の軽量化された戦略用核兵器とされています。
長崎を攻撃したファットマンの約半分の重さで、3倍の威力となっています。番組では具体的な搭載箇所を現在博物館になっているホーネット(CVS12)の取材とあわせて示していました。見たところ、艦橋の前方、以前のエセックス級では5インチ連装高射砲が装備されていたあたりの船体内部のようです。爆弾本体と核物質のコアそのものは別々に管理されていて不用意な事故を防いだりしないといけないし、核兵器を搭載するとなると、思ったよりスペースをくう物だとわかりました。
こうして見ると近年、アメリカ軍の艦艇から核兵器が降ろされたというのが分かる気がします。冷戦はなやかな時期なら、いつ必要になるか分からないから、搭載もするのでしょうけど、使用できないとなってくると、それだけのデッドスペースはとりたくないでしょう。
特に核兵器の価値が下がってきた時期は、確かアメリカ空母の艦上が多種多様な艦載機でひしめいて、一番大変だった時期です。対潜水艦用の空母が退役して、対潜水艦用の哨戒機が搭載されるは、ヘリも積まなきゃになってきて、そのためもあって、核が降ろされたのではないかとも思います。
オリスカニー艦上のサベージ攻撃機(Wikipedia, public domain)。
搭載機としては艦上で運用されるノースアメリカンAJ−1/−2サヴェージ艦上攻撃機が紹介されていました。この機体は、戦後一番最初に空母上で運用された核攻撃機P2V−3C(海上自衛隊でも使われたP2V哨戒機の派生型)の後継で、最初から空母からの核攻撃を念頭に開発された攻撃機です。当時は常時搭載ではなく厚木基地から飛来して核を搭載、発進するような運用をされていたようで。その主な目標は、平壌の軍事施設だった模様です。
その後オリスカニーは、搭載機の高性能化に伴う近代化改修を受け、さらに改良されてベトナム戦争にも投入されます。この時は核兵器搭載がさらに一般化されており、搭載機もダグラスA−4スカイホークへ、核兵器も重量がさらに半分近く、威力も最大1メガトン、までのB43に進化しています。A−4攻撃機への搭載要領などを示すフィルムなども紹介されていたのは非常に興味深いところです。空母上でも搭載機のそばにはM14自動小銃をもった海兵隊員が歩いていて、ものものしい警戒ぶりを示してます。
当時のオリスカニーには大小あわせて60発もの核が配置されていて、これらの目標はペトロパブロフスク、ウラジオストクの、ソ連太平洋艦隊の基地であったそうです。そしてこの核兵器は、我が国への入港の際にも、そのままで入ってきたとのことです。
そりゃまーそうでしょうね。洋上で移し替えたりするのには危険が伴いますし。1965年には同型艦のタイコンデロガから発進する際に搭載機もろとも海没した事件もおきておりますし。
また、当時創生期にあった海上自衛隊に米海軍が期待した役割も明確に説明されていました。津軽海峡、対馬海峡などの日本海の主要な海峡を有事の際に封鎖することが最大の課題であったとのこと。それにより北海道沖、沖縄周辺、ベトナム沖(ヤンキーステーションですな)に展開した米空母部隊を間接的に援護することになっていたそうです。
このあたりは、海上自衛隊に早い時期から有力な対潜水艦の兵器システムが導入されてきたことからも分かります。最初に海上自衛隊に供与された機体がTBMやらPV−1などの対潜水艦に重点をおいた機体であったことからも明らかですな。
先頃の米空母の交代、また今日のロシア製原子力潜水艦の事故といい、原子力と艦船の関わりがいろいろある中での放映には偶然ではありますが、いろいろ考えさせられた次第です。
※参考資料:
グローバルセキュリティのサイトとアメリカ海軍のNAVAL HISTRICAL CENTERのHP、アメリカ海軍空母97(文林堂)、世界の艦船誌など。
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