3月6日、フランスから原子力発電に使うプルサーマル用MOX核燃料を積んだ船が、日本に向け出港した。今回輸送されるMOX燃料は過去最大量となる。輸送距離は約10,000km。ヨーロッパから日本にいたるまでの航路上の沿岸諸国には安全面で問題が大きい。1月に日本の国会議員が連名で、輸送に関する安全基準を満たさなければMOX輸送を承認すべきでないとする書簡を国土交通省に送ったが、輸送は敢行された。日本到着は5月後半の予定である。
フランスのシェルブール港からプルサーマル用MOX核燃料(ウランとプルトニウムの混合酸化物)を積んだ2隻の船が日本に向け3月6日出港した。フランスのグリーンピースは、この輸送が原子力発電によってもたらされる受け入れ難い危険の一つであるとするメッセージを送ろうと、シェルブールで出港に反対する抗議行動を行なった(写真1)。
写真1:MOX輸送を阻もうとして警察に排除されるグリーンピースの活動家。フランス・シェルブール(写真提供グリーンピース)
今回輸送されるMOX燃料は、9基の輸送容器に納められた65体の燃料集合体からなり、含まれるプルトニウムの全量は約1・8トン。1993年にあかつき丸が運んだプルトニウム1・7トンを上回る過去最大の輸送となる。日本の使用済み核燃料から取り出しフランスで製造したMOX燃料は九州電力、四国電力、中部電力の原子力発電のプルサーマル燃料として使うために輸送されており、日本到着は5月後半の予定。
225個の長崎型原爆を作れるプルトニウム
国際グリーンピースによると、「このプルトニウムで225個の原子爆弾を作ることができる。長崎を破壊した原爆より強力だ」という。これがプルトニウムの最も大きな危険の一つで、MOX燃料は使用済み核燃料より容易に核兵器用プルトニウムを抽出することができ、核拡散の危険を増やすとも指摘している。
日本は1999年からプルサーマルを始めることになっており、これまで2回ヨーロッパから輸送されたが、慢性的な遅延が続いている。もともとウラン燃料を使うよう設計された原発でプルトニウムを多く含むMOX燃料の使用は大きな危険が懸念され、プルサーマルが予定される原発立地周辺の住民の不安と反対は強い。これに加えて、関西電力用に運ばれたMOX燃料は品質管理データの偽造で返品され、東京電力ではトラブル隠し発覚などで地元との了解が撤回されるなどし、99年と01年に運ばれた燃料は一度も使われていない。中越沖地震で甚大な被害を出した柏崎刈羽原発には、MOX燃料が使われないまま5年以上も眠っている。
写真2:船積みされる輸送容器。落下の衝撃で容器がゆがみ臨界が起こる危険が指摘されている(筆者撮影2001年シェルブール)
MOX燃料の輸送距離は約10,000km。ヨーロッパから日本にいたるまでの航路上の沿岸諸国にも安全性の問題を投げかけている。フランス出発直後に発表された今回の輸送ルートは喜望峰を回り、豪州とニュージーランド間のタスマン海峡を通りマイクロネシアを北上する。過去の輸送では、輸送船が通過する海に面するヨーロッパ諸国、南アフリカ、豪州、ニュージーランド、マイクロネシアなどの国々の政府や労働組合、市民団体が領海通過や経済水域へ入域に反対する運動を起こした。
事故やテロ攻撃を心配するルート上の沿岸国
沿岸諸国の懸念は、核分裂性物質からなるMOX燃料は、容器の落下による損傷や水没、船の火災などで臨界(核分裂連鎖反応の継続)が起こる可能性があることだ。そうでなくても、船の沈没や座礁、衝突事故等で核物質が散らばると公衆衛生と環境に対し重大な脅威となる。MOX燃料を輸送するのに用いられる容器が、大事故やテロ攻撃に耐えるのに十分強くないことを示す多くの証拠もあるとグリーンピースは指摘する。1つの例として火事に対して2、3時間テストされただけで安全としているが、船の火事は非常に長時間にわたるものが少なくないという。
写真3:輸送船の先端には「海賊」からプルトニウムを守る大砲があるが停泊中は覆ってある(筆者撮影同上)
対策なしで一方的に安全を言い張る日本政府
MOX燃料輸送の安全措置に関わる日本の所轄官庁は国土交通省だが、輸送ルート沿いの国々との緊急事態時の協議や対応計画などは全くなく、事故が起きた場合の保証や賠償体制もない。一方的に安全と言い張るばかりだと言う。こうしたことから、MOX燃料海上輸送の安全性は確保されているとは言い難く、日本はもとよりルート沿いの国々の不安と不信感は強い。
1月26日に日本の20名の国会議員が連名で、輸送に関する安全基準を満たさなければMOX輸送を承認すべきでないとする書簡を国土交通省に送った。しかし、国交省はこれを無視し数時間後には、国会で輸送の承認を取り付けた結果輸送船団は出発した。
現在、日本は英仏で再処理した約38トンのプルトニウムを持っている。日本でプルサーマルが本格的に始まればこのプルトニウムを、さらにお金を出してMOXに加工し、日本への輸送を始めるとなると全体で20回以上の海上輸送が必要となる。毎年2回輸送したとして10年間にわたって、輸送ルート沿いの国々を危険にさらすことになり、批難の嵐がわき起こることが予想され、現実的といえないのはだれの目にも明らかだろう。